INDAS概要:詳細

拠点形成の目的

インドは現在大きく変動しています。近年の経済成長は著しく、国内のインフラ整備は急速に進み、グローバルに活躍する豊かな人的資源の存在や、中間層の急激な成長にともなう都市文化の発展および消費活動の拡大は、世界の注目を浴びつつあります。国際政治においても、影響力は増大しています。しかしその一方で、インドにおいて社会経済問題が深刻化していることも事実です。経済発展の恩恵から取り残された人々が存在し、貧富の差は拡大しつつあります。宗教やカースト・アイデンティティに基づいた紛争も絶えず、環境汚染は深刻さを増しています。このように相反する二つの顔をもつインドの現実を総合的に把握し、変化の行方を見定めることが、今求められています。さらにインドとその周辺諸国からなる南アジアの安定的な発展は、世界の安全保障にとっても決定的に重要です。21世紀の世界を理解するために、現代インドおよび南アジア地域の総合的な研究は不可欠であると言えます。

しかしながら日本のインド研究は、当該地域の世界的な重要性にも関わらず、研究者の絶対数が不足しています。大学でのポストも、中国研究は言うに及ばずイスラーム研究と比べてもはるかに少ないのが現状であります。個々の研究者をみれば国際的にも高い水準にあるものの、少数のインド研究者がさまざまな研究機関に散在しているために、国内的には組織的な連携が不十分であり、また国際的な学術交流も個人レベルにとどまっています。その結果、日本におけるインド研究のプレゼンスは国内的にも国際的にも可視性が低い状況にあります。現代南アジアについての初の大型共同研究であった文部省科学研究費特定領域研究「南アジア世界の構造変動とネットワーク―多元的共生社会の発展モデルを求めて」(1998-2000年)は画期的な意義を有しましたが、すでに8年が経過しています。特定領域研究で培われた資源を継承し、インド研究者のネットワークを再形成することがまずは火急の課題と言えます。

このような現状を踏まえ、本事業は、現代インドの動態を総合的に捉えるとともに将来を展望できるような学術的な視角と方法論を確立し、国内及び国際的に連携して研究を行う組織体制と学術環境を整えることを目的とします。具体的に以下の6点を重要な課題として設定します。

  1. 学際化・総合化:現代インドの現在的動態と将来的展望について学際的・総合的に解明します。人文科学と社会科学を総合した視角を確立し、さらに自然科学との連携を通じて文理融合的な分析を進めます。
  2. 国内連携:現代インドに関わる研究者および研究機関の研究・教育・情報面での組織的な連携を強化し、拠点を核とした学術ネットワークを形成します。これにより国内のインド・南アジア地域研究者のコミュニケーションを促進し、建設的な議論を行える学術環境を構築します。多元的かつ多面的なインドの姿を理解するために、専攻、所属機関、年齢、民族・国籍、性別などに関わらず多様な研究者の積極的な協力を仰ぎます。
  3. 国際化:国際的な学術交流を推進し、日本から海外への発信力を高めて、双方向的なコミュニケーションを促進します。特に、インド・欧米・東アジアのインド研究者との緊密なネットワークを築きます。
  4. 次世代研究者養成:現代インド地域研究の分野でグローバルに発言できる次世代研究者を、研究・教育機関と連携しながら、学際的かつ国際的な環境のなかで養成します。
  5. 資料・情報整備:文献資料および電子情報の整備・公開を通じて研究インフラの向上に努めます。蓄積された史資料のデータベース化、空間情報データベースの構築・公開、映像資料・博物資料の整備・公開を促進します。
  6. 社学連携・公論形成:インドと関わる国際機関、NGO、企業などとのコミュニケーションと協力を推進します。また現代インドおよび日印関係に関する公論形成に寄与します。

研究対象

主たる対象は独立後インドとなりますが、現在的動態を歴史的な深みと将来的な展望をもって理解するために、長期の歴史的展開を視野に置く必要があります。対象領域としては、政治、経済、社会、文化、思想、文学、ジェンダー、環境、国際関係などのすべてが入ります。対象地域はインド共和国が中心となりますが、インドと関連の深い南アジア地域およびインド洋世界、そしてインド移民の活躍するグローバルな諸地域も対象とします。

研究方法

現代インドの現在的動態と将来的展望を理解するために、次の三つの手法を採用します。

  1. 現代インドの多様性に留意しながら全体像を描きます。マクロとミクロの総合および量的データと質的データの結合を目指します。
  2. 歴史的・文化的な深みにたってインドの現在的動態と将来的展望を把握します。歴史と現在をつないだ長期的視野を確立し、人文科学と社会科学そしてフィールド研究とテキスト研究を融合させます。
  3. 文理融合にもとづいたインドおよび南アジア地域の理解を目指します。自然科学と人文・社会科学を融合させ、自然・生態から歴史・文化および政治・経済までを包括する総合的なインド・南アジア地域研究を確立します。

研究組織

「現代インド地域研究」は、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属現代インド研究センター(中心拠点)、東京大学大学院人文社会系研究科次世代人文学開発センター・現代インド研究部門、広島大学現代インド研究センター、国立民族学博物館・現代インド研究拠点、東京外国語大学現代インド研究センター、龍谷大学人間・科学・宗教総合研究センター・現代インド研究センターの計6つの拠点を結ぶネットワーク型の研究組織を構築し、人間文化研究機構との共同研究として実施されます。各拠点の研究領域・テーマは次の通りです。

中心拠点:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属現代インド研究センター(KINDAS)
[総括責任者・拠点代表者]:田辺明生(現代インド研究センター長、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授)
[中心テーマ]:「現代インドの生存基盤・社会・政治」

東京大学拠点:東京大学大学院人文社会系研究科次世代人文学開発センター・現代インド研究部門(TINDAS)
[拠点代表者]:水島司(現代インド地域研究部門の長、東京大学大学院人文社会系研究科教授)
[中心テーマ]:「現代インドの経済発展と環境変動」

広島大学拠点:広島大学現代インド研究センター(HINDAS)
[拠点代表者]:岡橋秀典(現代インド研究センター長、広島大学大学院文学研究科教授)
[中心テーマ]:「現代インドの空間構造と社会変動」

国立民族学博物館拠点:人間文化研究機構国立民族学博物館・現代インド研究拠点(MINDAS)
[拠点代表者]:三尾稔(国立民族学博物館現代インド研究拠点代表、国立民族学博物館館長補佐、国立民族学博物館准教授)
[中心テーマ]:「現代インドの文化と宗教の動態」

東京外国語大学拠点:東京外国語大学現代インド研究センター(FINDAS)
[拠点代表者]:粟屋利江(現代インド研究センター長、東京外国語大学総合国際学研究院教授)
[中心テーマ]:「現代インドにおける文学・社会運動・ジェンダー」

龍谷大学拠点:龍谷大学人間・科学・宗教総合研究センター・現代インド研究センター(RINDAS)
[拠点代表者]:長崎暢子(現代インド研究センター長、龍谷大学人間・科学・宗教総合研究センター研究フェロー、龍谷大学/東京大学名誉教授)
[中心テーマ]:「現代政治に活きるインド思想の伝統」

研究成果の公開

現代インド地域研究プロジェクトの5年間にわたる研究活動の結果として、以下のような全体的成果のとりまとめを目指します。

  1. 現代インド研究叢書の編集・刊行
    既刊行の「叢書現代南アジア」(東京大学出版会)を踏まえたうえで、各拠点の新しい研究成果をまとめるための新叢書を刊行します。これには現地研究者など外国人研究者の翻訳論文も含めて掲載します。各拠点で1冊ずつ計6冊の刊行を目指します。
  2. 学術フォーラム誌『現代インド研究』の編集・刊行
    優れた研究成果や研究アイディアを発信するためのジャーナル『現代インド研究』を年に1回刊行します。
  3. ワーキングペーパーの編集・刊行
    次世代研究者の研究成果や萌芽的な研究アイディアなどを適宜ワーキングペーパーとして刊行します。
  4. 和文・英文の Website 上での研究成果の蓄積
    和文・英文のホームページを活用して、各拠点での研究活動や研究成果などの情報を蓄積し、国内外に発信します。
  5. 国内・国外を含む研究者ネットワークの形成
    特定領域研究「南アジア世界の構造変動とネットワーク」で形成した研究者ネットワークを再構築し、その拡大と充実を図ります。
  6. インド研究資料の整備と公開
    インドに関わる史資料、空間情報データベース、映像資料・博物資料の整備と公開を図ります。なお史資料については主に京都大学と東京外国語大学が、空間情報データベースについては主に東京大学と広島大学が、映像資料・博物資料については主に国立民族学博物館と龍谷大学が担当します。

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