【現代インド・南アジア次世代研究者合宿 受講生研究発表】発表者:宇根義己

現代インド・南アジア次世代研究者合宿

氏名:宇根義己(広島大学/人間文化研究機構)
発表タイトル:「産業立地からみた「地方」の変化」

本報告は,現代インドにおける産業立地の全体像を示すとともに,北部山岳州のウッタラーカンド州とヒマーチャル・プラデーシュ州で展開されてきた産業発展政策に伴う産業立地の実態とそこでの問題点について明らかにし,近年における「地方」の変化の一端を示した。

インド中央政府は国内の地域間格差是正のために,地方の工業分散化政策や大都市への産業立地規制などを1960年年代から図ってきた。1991年から実施された経済自由化政策によって,こうした工業分散化政策は後退していたが,2000年代に入ると,中央政府は山岳諸州(北東8州とウッタラーカンド州,ヒマーチャル・プラデーシュ州,ジャンムー・カシュミール州)に対して産業誘導政策を導入することとなった。この政策の実施以降,とりわけウッタラーカンド州とヒマーチャル・プラデーシュ州では工場進出が相次ぎ,高い経済成長をみせている。

ウッタラーカンド州とヒマーチャル・プラデーシュ州を対象とした産業政策は,環境に対する負荷が小さいと考えられる産業(推進産業)を規定しており,それに関する企業が指定の工業団地に入居する場合に,法人税免除などの優遇措置を講じるというものである。つまり,進出企業は指定の工業団地に立地誘導されることになる。工業団地は両州南部の平原部あるいは丘陵部に多く立地しており,それより奥地にはほとんど開発されていない。そのため,もともと経済開発の観点から条件の良い両州の南部に産業立地が集中し,その結果,州内では北部と南部との間の経済格差がますます拡大している。

本報告では,事例としてヒマーチャル・プラデーシュ州南部のソラン県バッディを取り上げ,企業への聞き取り調査や当該地域の統計から得られた事実から産業立地の実態に迫った。バッディでは,製薬,電機・電子,プラスチックなどの企業が多い。また,日本などの外国資本ではなく,インド国内の資本が中心である。さらに,チャンディーガルやデリー首都圏,パンジャーブに本社を置く企業が多い。労働者についても,スタッフ・エンジニアクラスではチャンディーガルから通勤する者も多いことから,当地域はチャンディーガルの郊外工業地域としての側面も有していると考えられる。しかし,それは当該地域の地域外部への依存を意味しており,自立性の弱さがみてとれる。

質問やコメント・討論では,政策に関する点(中央政府と州政府による政策の差異や両者による政策の関係性,これまでの工業分散化政策との差異など)や,両州間の工業団地開発や産業発展の差異についての解釈といった点に質問が集中した。また,ジャンムー・カシュミール州での産業政策の実態や,他州に対する産業政策の有無など,そして企業進出や工業団地開発に伴う社会構造の変化といった点についての質問も出された。頂いた多くの質問・コメントを踏まえて,論文のブラッシュアップを図りたい。

»「現代インド・南アジア次世代研究者合宿」2012

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