【現代インド・南アジア次世代研究者合宿 受講生研究発表】発表者:上澤伸子

現代インド・南アジア次世代研究者合宿

氏名:上澤伸子(東京外国語大学大学院博士後期課程)
発表タイトル:「バングラデュにおけるマイリティ女性と土地所有」

本発表の目的は、バングラデシュの母系マイノリティ集団ガロの女性たちが、土地所有の問題をめぐって、親族、コミュニティ、NGOなどの社会的ネットワーク、および司法・官僚制度といった国家組織を相手に、いかに交渉や調整を行っているかを描き出すことにあった。

国土が狭く人口の多いバングラデシュにおいて、土地をめぐる問題は地域・民族を問わず生じている問題である。なかでも少数民族の土地は、複雑かつ深刻な様相を呈し、解決までに時間と費用を要するものが多い。その背景には、少数民族の土地が1950~70年代に一連の政治体制によって国の資産に組み込まれたことや、非少数民族の人びとによって不当な手段で奪われたことなどがあった。その後、ガロの人びとを取り巻く社会の変容に伴い、土地所有に対するガロの人びとの考えは変化し、それと同時に土地所有の問題の性質も、それを調停するアクターも変化してきた。

たとえば土地問題を調停するアクターの変化に目を向けると、かつてガロ同士の土地所有の問題は、母系出自集団の男性リーダーや男性長老グループが解決に当たっていた。その一方で、ガロと非ガロの土地所有の問題は、司法機関に任されていた。しかし後者の場合、マイノリティであるガロがしばしば不利な立場に追いやられたため、1960年代後半にトライブ福祉協会が設立され、非少数民族とのすべてのもめ事がその窓口をつうじて処理されてきた。さらに1990年以降は、NGOの主導で、ガロ同士あるいは非ガロとの土地問題に関する実際的な支援が行なわれている。

本発表では、母系マイノリティ・コミュニティにおいて、土地所有権を有する女性とその家族が、親族の調停機能が衰えるなか、司法・官僚制度やNGOなどの外部の調停機関に交渉や調整を行い、女性の土地所有権を正当化するためのツールとして、母系的ルールや慣習法を再編していることを、事例をつうじて考察した。

フロアからは、西洋近代的な土地所有の考え方を批判的に考察するべきであるとのご指摘いただいた。植民地期以降の政治体制や研究者がもちこんだ土地の私的所有、所有と管理との分離などの考え方を、所与のものとして考えるのではなく、母系マイノリティ集団の人びとが、土地所有に対していかなる価値意識をもつのかを理解することが重要であるとのことだった。それを踏まえてこそ、政府の土地政策や不当な手段によって土地を失う危機に直面したときに、なぜかれらが、女性の土地を守るために母系的ルールを再編しなければならなかったかをより解明できるようになるだろう。次回の調査に向けて、問題設定の甘さを改善し、親族や土地所有に関する文献をさらに精読しておきたい。

»「現代インド・南アジア次世代研究者合宿」2012

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