【現代インド・南アジア次世代研究者合宿 受講生研究発表】発表者:溜和敏

現代インド・南アジア次世代研究者合宿

氏名:溜和敏(中央大学大学院)
発表タイトル:「インド系ディアスポラと印米関係―原子力協力法を事例に」

本報告では、2006年にアメリカ連邦議会で成立した米印原子力協力法の成立過程においてインド系アメリカ人(センサス上の区分としてはAsian Indian)の果たした役割について検討することを課題とした。また、この研究は報告者の博士学位申請論文「原子力協力協定をめぐるインドとアメリカの二国間関係」の一部であるため、こうした研究の全体像についても紹介し、さらには報告者の専門分野である国際関係論の見地から南アジア地域研究の状況がどのように感じられているのかについても見解を示した。これらの3点を報告の柱として、大きな観点から順番に細部へと報告を進めた。

国際関係論から見た南アジア地域研究の状況については、分析する対象となる紙の資料が乏しいために、取り組みうる課題が限られているという問題に言及した。また、インタビューという手法が恣意的に用いられていることへの懸念を呈しながらも、現代の問題を扱うにあたっては、結局のところそうした検証可能性を担保する手続きを踏まない形でのインタビューに頼らざるを得ないというジレンマについても提示した。

こうした方法論上の問題意識を抱えながらも遂行した博士学位申請論文としての研究は、「印米原子力協力協定をめぐる交渉において、なぜアメリカはインドに対して一方的な譲歩を行ったのか」というリサーチ・クエスチョンを設定して行われた。この問いに対して、利害認識に着目することと、意思決定のあり方に着目すること、国内政治からの制約に着目することによって説明を試みた。両国の国内政治における政治過程を精査した部分の一部が、インド系アメリカ人の役割についての考察であった。

先行研究ではインド系住民が米印原子力協力法の成立に貢献したと言われている。そうした経路にはいくつか考えられるが、本研究では、インド系住民の人口が増大したため、連邦議会議員は彼らを意識し、米印原子力協力法への賛成の判断を行ったという可能性を検討した。2006年7月26日のアメリカ連邦下院本会議における協力法案の採決における投票行動と、連邦下院選挙区ごとのインド系人口比率の相関を分析選挙区におけるインド系住民の人口比率の相関を分析した。その結果、インド系住民の人口比率が賛成に寄与していないことを示した。

以上が報告の概要である。その後、様々なコメントや質問が寄せられ、活発な討議が行われた。主な論点は、計量分析の手法における問題点を指摘する意見、政治研究におけるインタビューの有用性についてのコメント、原子力業界の働きかけが重要であったのではないかという意見、インド系ディアスポラという集団の全体を捉えることの必要性の指摘であった。

»「現代インド・南アジア次世代研究者合宿」2012

パーマリンクをブックマーク

コメントは受け付けていません。