【現代インド・南アジア次世代研究者合宿 受講生研究発表】発表者:水澤純人

現代インド・南アジア次世代研究者合宿

氏名:水澤純人(京都大学大学院)
発表タイトル:「パキスタン・パンジャーブ州における教育機会の階層化とその社会的背景―連邦・州における教育政策・制度の変化に着目して」

発表は、教育制度に関わる内容、すなわち制度の概要とその変化、変化が教育事業に与えた影響と、就学・教育状況に関わる内容の大きく二つに分けられる。そして、それぞれについて国全体の状況と、研究対象とするパンジャーブ州の状況を分けて言及した。

質疑は、発表構成に関わる事、個々の事実確認、そして先行研究の読み込みの三点に関して受けた。構成に関しては、個々の内容の繋がりが不明確である点が指摘された。これは、研究目的自体の不明確さに加え、取り扱った文献の分析結果を自身の研究目的に引きつけて解釈・統合する力不足によるものであり、今後の課題として残された。

二点目の個々の事実確認については、大きく二つの点からなされた。一つは、分権化が教育に与えた影響についてである。これは、州から県への権限委譲に関しては、この取り組みが県レベルでの教育事業強化に繋がったかどうかが、連邦から州への委譲では、各州でのカリキュラム・教科書作成がどの程度、可能となっているのかが尋ねられた。前者については、県の教育行政が重要な役割を果たすようになったことは確かであるものの、それは住民の参加・同意を伴った行政運営という、分権化の目的に沿った変化ではなく、むしろ州政府のトップ・ダウンの事業としての性格が残されたまま行われている点を述べた。後者については、制度上は可能となっているものの、実際の州ごとの取り組みはこれからであることを述べた。

事実確認の二つ目は、データとして挙げた私立小学校の運営特徴について、特に女性教員の働き方に関する質問を受けた。若い、未婚の女性が、低賃金で働くことが何故可能となっているのかについては、今後の現地調査の課題としたい。

最後の三点目の先行研究の読み込みについての質問は、二つに分けられる。一つはコメントであり、先行研究として挙げた論文二稿が、その投稿されているジャーナルやタイトルから極めて新しい知見を提示している可能性が高く、より深く読み込みを進めてみる必要があるとのことであった。二つ目は、南アジアにおける教育の変化をまとめた先行研究について、私の解釈の妥当性を尋ねられた。ここでは、南アジアの教育の変化とは、国家による就学機会の保証という、平等を建前とする原理と、能力主義の下、教育機会を、差異化を伴いながら付与していくという競争原理の二つの仕組みが併存するようになったことを指すのではないかという指摘がなされた。この点については、改めて先行研究で言わんとしていることを確かめるとともに、通地域的に設定出来るこうした認識枠組みの中に、個別・具体的なフィールドの教育事情をどこまで回収して論じるべきか、考えてみたい。

最後の討論では、分権化を通じて新たな選挙区分が創出されたことに伴い、地域の社会構成と教育機会の変化とはどのように関連するようになったのかという点と、人々の教育意識・学校選択の変化と社会集団とはどのように関連しているのかの二点について尋ねられた。今回の発表では、学校間の相違にのみ着目し、教育を必要とする人々の階層・関係性の変化には言及しなかった。今後、両者の関係性を視野にいれ、研究を発展・展開させていきたいと考えている。

»「現代インド・南アジア次世代研究者合宿」2012

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