【現代インド・南アジア次世代研究者合宿 受講生研究発表】発表者:久保徳幸

現代インド・南アジア次世代研究者合宿

氏名:久保徳幸(大阪大学大学院)
発表タイトル:「地方から「求めた」分権化、地方に「求める」分権化―パキスタンにみる地方分権要求運動の変化」

本報告では、パキスタンにおける地方分権要求運動の発信元、運動の主体が時代によっていかに変化したかを、通時的に観察することで、中央政府と地方の関係性の変容について考察した。

1947年のパキスタン建国、1971年のバングラデシュ独立および2000年代のムシャッラフ政権期から現政権のザルダーリー政権までを大きな時代区分とし、歴史の流れに沿って分析を行った。その中で、バングラデシュ独立を契機として、パキスタンの地方分権は、かつて地方から中央政府へ「求めた」ものから、2000年代に入ってからは中央政府が地方に「求める」ものへと変化しているという指摘を行った。

具体的には、地方からの自治要求運動がバングラデシュ独立で頂点を迎えると、Z.A.ブットー政権下では、その懐柔策として、「パキスタン文化」という新たな枠組みを作り、地域文化が「パキスタン文化」を構成しているという点を強調し、地域文化を取り込むことで中央との協調を企図した。この流れの中で設立されたのが、地域文化を保存・研究する国立民俗伝統遺産研究所(ローク・ヴィルサLok Virsa,1974年設立)であり、「パキスタン文学」という枠組みで各地域の文学を振興・奨励する「パキスタン文学アカデミー(Pakistan Academy of Letters,1976年設立)」であった。その後のズィヤーウル・ハク大統領がクーデタで政権をZ.A.ブットーから奪取し、戒厳令を敷くことによって政治活動を制限した為、地域政党の政治活動はおのずと沈静化した。その後90年代の汚職の横行などによる政治腐敗の時代を経て、現在の人民党政権下では、与野党間で新たな州設置に関する議論が起こっている。これは中央政府の働きかけによって地方の枠組みを変えようとするもので、現在の地方分権要求の背景に、中央政府の与野党がそれぞれの支持基盤を確保する目的があり、むしろパキスタンにおける中央集権強化がうかがえるという内容であった。

本報告に対して、先行研究レビューの甘さや議論に不必要な部分があるとの指摘を受けた。また2000年代からの中央政府と地方の関係性について、中央政府が主導した分権化ではなく、分権化の名のもとに地方に責任を負わせることがあるのではないか、など議論をより深化する為に必要なコメントを多く受けた。

»「現代インド・南アジア次世代研究者合宿」2012

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