【現代インド・南アジア次世代研究者合宿 受講生研究発表】発表者:根本達

現代インド・南アジア次世代研究者合宿

氏名:根本達(筑波大学大学院人文社会学研究科)
発表タイトル:「二つの改宗から考える宗教コミュニティー間の対立と融和―現代インドの仏教徒たちによるアイデンティティ・ポリティクスと日常的実践」

発表者は、現代インドのマハーラーシュトラ州ナーグプル市の仏教徒(「不可触民」)たちのアイデンティティ・ポリティクスと日常的実践を研究対象とし、宗教コミュニティ間の対立と融和について、以下の点を検証した。第一に、本発表の調査地であるナーグプル市の仏教徒居住区の概要について、2001年インド国勢調査や写真資料を用いて説明を行ない、現代インドにおいてナーグプル市が仏教徒運動の中心地であることを示した。第二に、仏教徒たちによる「不可触民」解放運動について、アンベードカルが宗教社会運動を開始した1920年代から、佐々井秀嶺がナーグプル市に登場した1960年代、そして、現在に至るまでの歴史的背景を提示した。第三に、現地調査の結果を提示するかたちで、「アンベードカルの教え」を基盤とする「切断・分類する改宗」について考察し、仏教徒活動家によるアイデンティティ・ポリティクスにより、それぞれの宗教間の境界線が明確なものとなり、現地において宗教コミュニティ間の対立が生じていることを検証した。第四に、現地調査から得られたデータを示すかたちで「読み換える改宗」について検討し、ナーグプル市で頻繁に実施される仏教儀礼である「朝夕の勤め」において、仏教徒たちが超自然的な神の力を肯定する既存の「祝福の論理」を基盤として、仏教儀礼を読み換えていることを検証した。最後に、宗教間の境界に立っている「半仏教徒・半ヒンドゥー教徒」の日常的戦術に目を向け、仏教徒活動家によってヒンドゥー教儀礼が否定されている中で、「半仏教徒・半ヒンドゥー教徒」たちが儀礼の日程を変えることによりヒンドゥー教儀礼を脱カテゴリー化していることを検証し、宗教コミュニティ間の融和の可能性について考察した。

以上の発表に対し、参加者から以下のような質問があった。第一に、「半仏教徒・半ヒンドゥー教徒」による脱カテゴリー化は、「不可触民」解放運動における地位向上を目指した動きと関連しているのか。第二に、「半仏教徒・半ヒンドゥー教徒」の日常的戦術は、宗教コミュニティ間の融和の可能性を内包したものといえるのか。第三に、酒井直樹による「関係性による同一性」とマルク・オジェによる「関係的同一性」の共通点・相違点について。第四に、仏教徒の家庭からヒンドゥー教の神々を回収・焼却する仏教徒活動家の取り組みは、宗教コミュニティ間の対立を発生させるものといえるのか。第五に、佐々井秀嶺の「平等」の思想、および、アンベードカルの1956年集団改宗式の意義は、どのようなものであるか。以上の質問に対し、発表者は、現地調査から得られたデータを用いながら、本発表では説明が不十分であった点を補足するかたちで回答を行なった。

»「現代インド・南アジア次世代研究者合宿」2010

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