【現代インド・南アジアセミナー 受講生による講義記録】講師:柳澤悠

現代インド・南アジアセミナー

講師氏名:柳澤悠「20世紀インドの経済成長における「対外開放性」と「環境制約」」
報告者氏名:枝川未来(広島大学)

本講義は、以下の3つを問題点として掲げ、その問題点に対する主張を中心に行われた。

 

  1. 社会の特徴を非歴史的に規定することの問題性に対しての主張
    →講師は、農業の停滞・土地生産性の動向が歴史的に変化することに着目した既存の先行研究に対し、経済発展の還元主義的解釈を問い直すことを第一とした。そして、歴史的な文脈の中で、「環境制約」「対外開放性」の意味を把握する必要があることを主張した。

  2. 現代の経済成長への通説とその難点
    →講師は、インド独立以降、対外閉鎖的な輸入代替工業化が1991年に自由化改革・対外開放政策に転換したことで、インド経済は低成長から高成長になったという通説を批判した。そして、植民地期の経済の開放性が、20世紀前半のGDP停滞の主要な原因であると考え、対外閉鎖性による経済成長は植民地期と比較し、飛躍的であったということを主張した。よって、1991年以降の対外自由化がインド経済の成長を量的・質的に高めた一方、1991年以降の対外発展は、閉鎖期の蓄積なしに不可能であったと考えた。

  3. 歴史的・自然的な制約に対する人間の営為のもつ意味
    →講師は、80年代以降のインド経済成長率加速において農村・農業が非常に重要であるとした。そして、「環境制約」を乗り越えて農業が発展したことは、農村社会における革新性の形成を意味するとし、現代インドの「対外開放性」は、商業資本の流通独占に対抗しながら現れた農業・農村起源の動きであると考えた。その起源は、「環境制約」を乗り越える技術革新への志向の形成であると考えることができ、農村社会の中から技術志向的な対外開放性への変化だと見て捉えることができる。よって、現在の経済発展は、「環境制約」と独立前の「対外開放性」への対抗と対応の中から発生した動きではないかと分析した。これらのことから、環境と人間を1対1で直接的に結びつけることは難しいとする。

 

質疑応答では、「環境決定論」の問題をどう捉えるかということや、多様な対外開放性についての質問、地域資本家層と官僚の結びつきについての質問等がされた。

 

»「現代インド・南アジアセミナー」2013

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