【現代インド・南アジアセミナー 受講生による講義記録】講師:子島進

現代インド・南アジアセミナー

講師氏名:子島進「ムスリムNGOに見る『奉仕(khidmat)』の概念:パキスタンの事例から」
報告者氏名:渡部智之(京都大学大学院)

本講義は、子島先生が実際に東日本大震災の支援に関わる中で出会ったムスリムの人たちが使用する奉仕や報奨というイスラームの概念を切り口に、ムスリムNGOそして彼らが支援活動に取り組む論理を理解しようと試みるものであった。講義では、パキスタン人が中心となって活動しているNGOであるJIT(Japan Islamic Trust)およびJITがネットワークを持っているパキスタン国内のNGOの事例を通じて、奉仕や報奨という概念、それらの論理を基盤とした支援活動の説明がなされ、イスラームを専門としない者にも非常に分かりやすいものであった。

 

まず前半では、東日本大震災時に福島県いわき市を中心に支援活動を行ったJITを事例として、ムスリムNGOを理解する上で一つのキーワードとなる報奨の概念、そしてそれが人類への奉仕にも繋がることの説明がなされた。具体的には、アッラーを喜ばせることが報奨であるが、アッラーは全知全能であることから、アッラーがつくった人間に奉仕すればアッラーが喜んでくれるという論理を彼らが使用していることがインタビュー調査結果から示された。

 

講義の後半では、前半で説明された奉仕という概念が、日本で活動するJITのみならず、パキスタンで活動するNGO、国内のある地域で活動する高校生など広範に使用される概念

であることが説明された。最後に子島先生は、日本人が支援活動を行うときに頻繁に使用する恩返しという言葉についても、パキスタン人はイスラームの教えに適っていると捉えていることを説明し、ムスリムNGOは単純に報奨や奉仕という日本人とは異なる価値観で動いているのでなく、恩返しという日本人の価値観とも重なり合う部分も持ち合わせていることについても言及された。

 

講義後の質疑応答では、震災時に奉仕を受けた側がイスラームの団体であることをどう認識していたのかなど支援活動に関する質問、ボランティアとして参加した人は奉仕という価値観に引き付けられたのか、イスラーム的な価値以外に彼らを支援に動かすインセンティブはないかなど、イスラーム的価値と支援活動への動機づけとの関連に関する質問がなされた。本講義は、ムスリムNGOそして彼らの支援活動に取り組む論理に関する理解を促し、受講生及び聴講者から広く関心を集めるものであった。

 

»「現代インド・南アジアセミナー」2013

パーマリンクをブックマーク

コメントは受け付けていません。