【現代インド・南アジアセミナー 受講生による講義記録】講師:黒崎卓

現代インド・南アジアセミナー

講師氏名:黒崎卓「インドの経済成長と貧困問題」
報告者氏名:永易功子(香川大学大学院)

黒崎先生は、インド政府が公表している貧困者比率について研究されており、その貧困指標の意味を正しく理解するためにどうすればよいのか、経済専門でない人に是非知らせたいと、主に帰属計算について説明して下さいました。

 

今回の講義の最注目点は、公表されている州ごとの貧困者比率において、たとえば農村部では収入が一月一人673ルピー以下の人を貧困者と計算していますが、農村部で実際にそんなに収入のある人は少なく、現金収入はそれ以下でも、自給自足や現物取引によって、飢えることなく人間として十分幸福に暮らせるということです。反対に、都市部では、収入が一月一人860ルピー以下の人を貧困者と計算していますが、その金額では、都市では暮らせないと言われます。インドは特に生活様式が多様な社会なので、貧困者数や貧困者比率を表すにも、現金収入以外に農家では自給分や現物移転消費、親類縁者による支援部分などの帰属計算、そして都会では住宅費や生活に必要な費用、親類縁者への仕送り分などの帰属計算を無視してはいけないということです。

 

相対的貧困と、絶対的貧困という考え方もあり、インド政府が出している絶対的貧困線とは、「最低限の生活のできる収入」ということですが、インドは1980年から高度成長しており、都市部と農村部との格差がますます広まり、それを考慮して、2010年の視点では低めに設定されたそうです。所得貧困だけではなく、帰属計算など、多面的なアプローチが必要です。

 

黒崎先生のレジュメには、様々なデータと、帰属計算例、愉快で現実的な漫画も入っていて、経済専門でなくても分かりやすく、講義は楽しく進められました。

 

後半はインドにおけるこれまでの経済成長と貧困削減への取り組みが語られ、成長の恩恵が貧困層に波及する「トリックルダウン」の難しさも知りました。

 

インドは急激な経済成長をしており、インドの都市化、工業化の波は止まらないものでしょう。都市部のグローバル化は避けられないものだと思いますが、農村部では、昔ながらの生活が少しずつ、ゆっくりと変わっていくでしょう。近代日本のような発展の仕方ではなく、インドの崇高な文化や哲学性を大切に残していく発展の仕方であってほしいと祈ります。インドの村落においては、できるだけ自給自足で、経済にしばられない暮らしが続くことを望みます。そのためにも、帰属計算を重視し、一口に貧困層という考えをしてはいけないのだと、改めて考えさせて頂きました。

 

このような貴重な機会を得ることができて、黒崎先生と他の講義をしてくださった先生方、セミナースタッフの皆様に深く感謝しています。

 

»「現代インド・南アジアセミナー」2012

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