【現代インド・南アジアセミナー 受講生の感想(五十音順)】

現代インド・南アジアセミナー

氏名:赤木綾香 (鳥取県立高等学校教諭)

興味深い講義と発表で、刺激に満ちた3日間でした。自らの体験と照らし合わせながら得心がいくもの、自分とは馴染みの薄いテーマに新鮮さを感じるもの、多岐にわたって南アジアについての理解を深められたように思います。インドに留学したものの、日本で南アジアにかかわる学科に属してこなかった私にとって、専門的な講義、発表のすべてが刺激的でした。久しぶりに一日中講義を聞くという体験に心地よい疲労感を感じつつも、その空間を存分に満喫しました。
漠然と理解していた概念について、丁寧に定義づけをしていただけたことは有益な視座の獲得となりました。研究者の方はそれぞれ様々な切り口からものごとを見ておられ、斬新な視点で切り取られた南アジアに強烈な印象を受けたと同時にその労力には頭が下がりました。自分に持ち合わせていない新しい視点を多く提示していただけたように思います。特に、今までムスリムが多いバングラデシュと豚飼育を結びつけたことはなく、また観光地はその資源に自然発生的に人が集まったのだと理解していました。今回の講義の内容に驚くとともに、自分自身の事象を見る姿勢を反省させられました。このセミナーを通じて南アジア理解に限らず、どんなことも当たり前だと通り過ぎるのではなく懐疑的にみるという原点、ステレオタイプにとらわれては本質を見失う危険性があるということに気付かされたように思います。わかったつもりの危うさを改めて痛感しました。
有益な講義・発表もさることながら、様々なバックグラウンドを持った参加者と交流を持てたことも貴重な時間でした。しかし有意義なセミナーだったからこそ、もっと受講生が多くてもいいのではないかと感じます。日本ではまだ南アジアは異質なもの、遠いものという印象が否めませんが、特にインドとは国交樹立60周年を迎え、経済的・政治的にもつながりが強い現在、もっと身近に受け入れられるべきだと思います。そのためにももっと裾野を広げ、多様な受講者を積極的に受け入れて、インドをはじめとする南アジアの理解が深まることを期待します。また差異に焦点を当てるだけでなく、共通するものにも目を向け、身近に感じられる言及を増やし、日本でもっと南アジアに関心が生まれることを願っています。
最後に、学生という身分ではないのにもかかわらず、セミナーに参加する機会を提供していただけたことに非常に感謝しています。南アジアって懐が深い!と改めて感じた3日間でした。本当にありがとうございました。

 

氏名:板倉和裕 (広島大学大学院社会科学研究科)

 

 

氏名:奥埜梨恵 (ジャワーハルラール・ネルー大学大学院歴史学研究科)

2010年のセミナーに続き、今回もセミナーに参加させていただいた。今回の講義は、インド、ネパール、バングラデシュの三国に集中し、やや全体的に地域・分野が偏っていたような印象をうけるが、文化人類学、歴史学、経済学などのディシプリンからの分析が発表され、同じ地域を対象としながらも奥行きのある南アジア像を知る良い機会となった。受講生研究発表のトピックも非常に独創的で、刺激的な議論が繰り広げられた。
今回のセミナーを通して感じたことは、研究者の「世代を超えての対話」の重要性である。様々な世代の研究者が集まり、質疑応答を通しての対話が設けられたことによって、若手の研究者や学生にとって、文献から書き起こすことでしか得られなかった先行研究の背景をより具体的に知るきっかけになったのではないかと思う。例えば、石井先生の講義では、それぞれの先行研究の解説とあわせて、自身の学生時代からの研究蓄積の流れについて振り返って頂いた。実際に研究の流れに身を投じて活躍された世代の研究者から見た「振り返り」を聞くことにより、得られる情報も印象も大きく変化し、同時に、今後の焦点をあてるべき研究領域を浮かび上がらせていたようにも感じられる。また、小谷先生、常田先生、杉本先生のような長期にわたるフィールドワークの報告も、若手研究者にとっては今後のモデル・ワークになるのではないかと思う。今回は文化人類学の発表が目立っていたが、長期にわたる定点調査は、調査の場所こそ限られてはいるものの、これらの事例が集まって、現在のインドを象徴していることは紛れもない事実でもある。
私が最も興味を引かれたのは、池谷先生の講義である。元々は南アジア専門の研究者ではないとのことだったが、南アジアに浸っていては気づけなかった点、つまり、ブタ遊牧は世界的にみてもバングラデシュしかないという指摘に驚き、同時に、自分がいかに狭い視野で南アジアを捉えていたかということに気づかされた内容であった。研究意義は、どうしても南アジア地域内で比較する場合が多いのだが、南アジアと世界の比較を怠ってはならないと気づかされた。この「グローバルとインド」という視点は、私の専門分野である歴史学にもあてはまることであり、太田先生の講義でも、その重要性と実現の難しさについて説明頂いた。また、黒崎先生の貧困線についての詳細な解説も、改めて数値の活用について考えさせられる講義であった。私たちは具体的な数字があると、あたかも最も説得力のある証拠のように研究で利用してしまうケースもあるが、その数字が必ずしも実態を表しているとはいえず、より現実に近づけるための算出方法の検討が必要であるということを学んだ。
南アジア研究は、どうしてもミクロな特徴に注力してしまいがちだが、このようなセミナーを通して南アジア全体の相似性を確認し、世界における南アジアを意識することができる。今後も、できるだけ多くの南アジア研究者が交流する機会を設け、個々の研究が一丸となって現代インドの諸問題の解明にとりくみ、大きな変化を遂げているインドの“証言者”であり続けられればと願っている。

 

氏名:加藤瑞紀 (南山大学人文学部人類文化学科)

本セミナーに参加したことにより、現代インド・南アジアについて研究していらっしゃる多くの研究者の方々のお話を聞くことができ、とても刺激ある経験となった。特に、本セミナーでは私の専攻である文化人類学の方のみでなく、様々な分野の方々の講義を拝聴する機会があり大変勉強になった。私は学部生であり、まだまだ自分の専門が確立していないため、このような多岐にわたる分野のお話を聞けた事は、今後の自分の研究においてどのように南アジアという地域にアプローチしていくかを決める上で大きな意味を持つ経験となった。
講師の先生方の講義をお聞きしたことで、今後南アジアを研究していくためには自分の専門にこもらずに他分野にも広く関心を持つことの重要性を実感した。正直講義を受ける前にセミナープログラムを拝見した際には、馴染みがない分野が多かったため文化人類学ですらまだちゃんと理解できていない自分が正確に理解できるかどうか不安を抱いていた。しかし実際に講義を受けたところ、自分の知らない分野であったからこそとても興味を持って拝聴することができ、大変多くのものを学ぶことができた。特に、私が本セミナーで関心を抱いたのは、黒崎先生の「インドの経済成長と貧困問題」であった。本講義では、経済学の視点からインドの貧困を考えており、文化人類学などの他分野においてもインドの貧困を考える際には必ず必要となるであろう貧困指標の見方、また研究での取り上げ方などを丁寧かつわかりやすく説明してくださり、大変勉強となった。
さらに、池谷先生の「南アジアの環境人類学の地平―家畜・人関係を中心として」ではバングラデシュの豚の遊牧に対し、豚自身を研究する生態学などとは違い、豚を飼育している人に焦点をあてるという、人類学ならではのアプローチの仕方を知る事ができた。文化人類学を学んでいる自分にとって、環境人類学という同じ人類学の中でもまた違った人類学の形を知ることができた本講義はとても興味深く、人類学の持つおもしろさをまた一つ発見させてくれた。
講義以外にも本セミナーで得たものは、諸先生方や他の受講生の方々の講義に対する積極的な姿勢、調査への情熱など、今後の参考になることばかりであり、今回学部生として参加できたことにとても感謝している。最後に、このような機会を与えてくださった現代インド・南アジアセミナー関係者の皆様には心より御礼申し上げます。

 

氏名:久保徳幸 (大阪大学大学院言語文化研究科)

本セミナーに三日間参加し、今後の現代インド地域研究がどういった方向に向かっていくのか、改めて考えさせられた。現代インド地域を研究対象としつつも、それぞれのディシプリンから現代インドの諸問題にアプローチすることで、今までに無かった気づきを新たに得られたという点で非常に刺激的であり且つ有意義であった。その中でも個人的に印象深かった講義・発表を四点挙げたい。
一つ目は、黒崎卓先生の「インド経済と貧困問題」であった。貧困線と実際の貧困状況が異なるのはなぜかという疑問を帰属計算という手法を用いることで解決できるといった内容であり、グラフを用いる際には細心の注意を払わなければならないということを痛感した。二つ目は森本泉先生の「南アジアにおけるトゥーリズムの展開―ネパールを中心に」であった。主にトゥーリズム現象の展開を通してネパールの変化を考えるものであったが、ムスリムの巡礼も大きな意味でこの現象として捉えられ、イスラミック・トゥーリズムなるものへの発展が今後の現代インドにおいて起き得る現象だと感じた。三つ目は常田夕美子先生の「ポストコロニアル状況における女性の行為主体性―村と都市の対比」であった。現代インドの女性たちが、どのような立場に置かれているのかを人類学的見地から綿密に描かれていた。四つ目は森田剛光氏による「国際移動にともなう民族組織の変容―ネパール、タカリーの事例」であった。タカリー社会の相互扶助ネットワークの存在が世界各地に広がっていることに驚くと同時に、IT化の時代において、こうしたネットワークがますます重要になってくるという示唆を与えるものであった。
総括すると現代インドにおいて、貧困問題やヒト・モノの移動、ジェンダー問題など今後とも注視していかなければならない課題が山積していたと言える。最後に、現代インド地域研究が多くの方々に支えられているということに感謝をし、こうした人たちとの繋がりを無駄にはせず、本セミナーで得られた知識や見聞を今後の研究に必ずや活かしたい。

 

氏名:篠置理子 (大阪大学大学院言語文化研究科)

今回の現代インド・南アジアセミナーのプログラムは、7つの講義と5つの発表、そして懇親会が三日間に凝縮された非常に盛り沢山な構成であった。以下、講義と発表についてそれぞれ振り返ったのちに、セミナー全体の感想をまとめる。
先生方による7つのご講義は、様々な地域や分野をカバーしていて、それぞれ背後に高い専門性を感じさせるものではあったが、該当の分野や地域について馴染みの薄い受講者の理解や関心を高める工夫も随所に感じられた。そのため、私個人にとって日頃馴染みの薄いネパール社会についての石井先生、森本先生のご発表や、インドの貧困問題について経済学の視点から読み解く方法を説かれた黒崎先生のご講義も、心理的なハードルをそれ程は高く持たずに聴くことができた。「南アジア」とひとことで言っても、そこにはより小さな単位の地域や民族からなる社会が重層的に混在しており、そこで展開する事象についても様々な視点と角度から観察が可能である。そのことが改めて感じられる講義の構成であったと思う。
受講者による発表は、それぞれの発表者の研究・調査報告という性格上、当然ではあるが、講義に比べるとより個別的・特殊的な事象を取り扱っていた。それ故、自分の学ぶ分野から遠い主題を扱った発表に関しては特に、知識の不足のために理解や関心が追い付かない部分もあったことは否めない。対処として、可能な限り自分の研究テーマに引き寄せて考えてみようと努めたが、逆にそうした態度によってその研究発表の要点から逸れてしまう部分もあるようにも感じられた。やはり、一にも二にも、普段から広範なことがらについて見識を蓄えておくことが大切であると再認識した。また、自分自身の発表では、発表技術の向上の必要性を痛感するとともに、貴重な質問やアドバイスを頂き、今後の研究にとってのよい刺激を得ることができた。
全日程を終え、受講者また発表者としての自分の成果を顧みると、広範な分野に及ぶそれぞれの講義と発表を十分に理解できたか、また、自分自身がセミナーのレベルにあった精度の発表を提供できたかについては少なからず不安と反省が残る。しかし、普段自分の研究対象と直接関わる極々狭い範囲に閉じこもりがちな自分のような院生にとって、様々なテーマの講義や、先輩若手研究者の方々の研究報告をまとめて視聴できるこうしたセミナーが、まさに必要な企画であったことに間違いはない。また、懇親会で聞くことのできた先生方や他の受講者の方々のお話にも、学ぶところや励まされるところが多くあり、印象に残っている。全体を振り返ると、講義・発表の内容や、受講者たちの関心を通じて、改めて南アジア研究の射程の広さを実感した三日間であった。

 

氏名:澁谷俊樹 (慶應義塾大学大学院社会学研究科)

本セミナーには初めて参加した。インドからの帰国のフライトが大幅に遅れ、帰宅当日準備もままならぬ内に寝ぼけ眼で参加することになってしまったが、しばしば刺激的な内容に感化された有意義なセミナーであった。報告の題名、方法論は多岐に渡り、その全てについて本報告書にまとめ上げる力は筆者にはないが、最後に代表の田辺明生氏が本セミナー共通のテーマとして語られた「グローバル化の中の南アジアを捉える」という言葉を手掛かりに、特に刺激を受けた講義についてここに報告させていただきたい。
特に新鮮であったのは、小谷汪之氏と太田信宏氏による「近世」の南アジアに関する議論である。「グローバル化の中の南アジア」を考える場合、今日では、近年の経済自由化以降のグローバル化を、歴史的特殊性を暗黙の前提として想定することが多いが、両氏はこうした「ポストモダン」的視点とは逆に「近世」から「近代」を再考しようとしていた。
太田氏によると、「近世」は欧米の歴史研究では比較的新しい概念で、ヨーロッパ中心ではない統合された世界史が構想される潮流の中で提唱された。欧米を中心としないグローバル化やグローカル化といえばポストモダンの文脈でも話題に上るが、そもそも近世的視点からは、ヨーロッパの植民地化が確立する以前の、ヨーロッパやムガル朝をあくまで一部に含んだ「『初期資本主義的グローバル経済』のもとで『世界各地の生産、配分、商品、社会編成のパターン』の一律的ではない再編成が進展。現物・交換経済的な村落庸人制度と商品・貨幣経済との関係性」が再考されるという。カール・ポランニーは、今日の資本主義の基盤となる市場経済社会が近代ヨーロッパに生み出された「特殊」なシステムで、非ヨーロッパの伝統的な互酬や再分配等の制度は破壊されると論じた。K.ポランニーを継いで栗本慎一郎が、西ヨーロッパと日本の江戸時代にだけ人口増加など同時代的な相似現象が見られ、市場経済社会を生み出す特殊な土壌にあったことを強調したこともあった。近世研究はこうした歴史観を根本から揺るがそうとしているのである。
筆者の専門とするベンガル出身のDinesh Chandra Senはベンガルの言語と文学の歴史に関する1911年の著書の中で、18世紀前後のベンガルを、ムガルが没落して盗賊が跋扈し、在地王権の腐敗する暗黒の時代として描写している。現地エリートも啓蒙主義的世界観を共有しているわけである。これに対し近世研究における18世紀見直し論は、18世紀を暗黒時代とみなすのではなく、「18世紀における『発展』と植民地化以前と以後の連続面に着目」し、啓蒙の近代に対立する暗黒の「プレ・モダン」ではない「アーリー・モダン」を再構築するようである。今後とも研究会に参加することで、「近代」や「グローバル」を論じる上で、近世研究者の観点も念頭に置けるようにしたい。そう思える講義であった。

氏名:永易功子 (香川大学大学院 アジア・太平洋社会論専攻)

現代インド・南アジアセミナーに初めて参加させて頂き、初日は緊張しましたが、2日目、3日目となるにつれ、緊張もほぐれ、3日目には勇気を出して質問もできるようになり、大変貴重な体験をしたと感じています。3日間に渡って、日本中の著名な先生方や博士課程の研究者の方々の発表を拝聴しまして、3日間で去年1年間分位、脳に血液を巡らせたような気がしました。このような機会を得ることができまして、講義をしてくださった先生方、セミナースタッフの皆様に深く感謝しています。
現代インド・南アジア研究において、こんなにも様々な角度から、沢山のアプローチの仕方があるのかと、目を覚まされたような思いと共に、先生方の深い研究における長い努力の時間が思い知らされて、自然と頭が下がらざるをえませんでした。そして、研究者の方々のインド・南アジア地域を愛する気持ちが大きく見えて、嬉しくなりました。
私は、ガンディー思想を研究しておりますが、今回のセミナーでは、広く南アジアの色々な分野の研究に出会えたことが、新鮮でした。特に、先生方によって独自なフィールドワークの方法に興味を持ちました。その時にいただいた資料を何度か読み返して、感心しています。
近い将来、私も演壇に立って発表することを目標に、研究に精進していきたいと思います。来年も再来年も、今年と同じようにセミナーが開催されることを願っています。

 

氏名:中西宏晃 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

今回のセミナーでは、フルペーパーの研究発表をさせていただき、大変貴重な研鑽の機会をいただいた、と実感しております。とりわけ、セッションの司会という立場から、フルペーパーに対する真摯なコメントをいただいた上田先生、並びに研究発表について貴重なご意見をいただいた先生方と参加者の方々に心から感謝申し上げます。今後の研究の励みとなりました。
本セミナーの意義は、南アジア地域に関する様々な分野の専門家や受講生から、議論を通じて浮き彫りとなった問題点に対する対処法、そして、今後どのように研究を発展できるか、といったご意見を賜ったり、その意見交換をより気軽に行うことができる点にあるのではないか、と感じました。
その他にも、多様な分野の最先端の研究成果を講師の先生方、そして受講生から拝聴できたことは、研究の視野が広がり、また現代インドの理解をより一層深めることにつながりました。とりわけ、「特異性」や「土着性」として論じられてきたインドの政治経済・社会・文化の特徴が、近年、目まぐるしい速さで変容してつつあること、それにより、現地の人々の生活様式や考え方が我々のものとわりあい近いものになりつつあることを感じ取りました。そういった意味で、同セミナー受講後に、インドに対する親近感がわき、それを多面的により一層深く理解したい、という気持ちになりました。それと同時に、インド像を探求することがいかに重要であるかを改めて考えさせられました。
若手の意見交流と発表の場である、現代インド・南アジアセミナーが今後も開催され、現代インド地域研究全体の発展につながることを願います。

 

氏名:中村雪子 (お茶の水女子大学大学院ジェンダー学際研究専攻)

 

 

氏名:森田剛光 (名古屋大学大学院文学研究科)

 

 

 

 

»「現代インド・南アジアセミナー」2012

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