【現代インド・南アジアセミナー 受講生研究発表】発表者:吉沢加奈子

現代インド・南アジアセミナー

氏名:吉沢加奈子(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程)
発表タイトル:「インド・ミゾラム州における市民社会:青年団の歴史的変容」

本発表では、インド北東地域の一州であるミゾラム州の青年団に焦点を当て、同地域における市民社会的領域の形成過程について考察した。具体的には、南アジアにおける市民社会の理解枠組みとして従来あまり着目されてこなかった地域固有の価値や風習の再構築過程に視座をおき、青年団の活動が地域の伝統的風習や道徳律を再構築しただけでなく、地域社会の対立構造の克服や、諸トライブと諸氏族間の紐帯の形成へ寄与し、伝道団の下位組織から社会奉仕活動に特化したNGOへと変容を遂げた点を指摘した。

 

上記の発表に対し、青年団の一般メンバーと政治の関係や、メンバーの収入源、植民地支配以前の社会における国家との関係が問われたほか、「トライブ」とされる人々を表象する政治的・学術的語法やジェンダーの視点に留意すべきとの指摘がなされた。今回の発表では青年団の変容過程を3つの歴史的局面に区分したが、歴史学の視点からは各局面間のつながりを明確にすることや、より深い記述の必要性が指摘された。青年団が行政の末端組織にすぎないのではないかという指摘からは、研究対象地域における国家と市民社会の関係をより精密に論じることが今後の課題として明確になった。そのほかには、地域の土地所有形態と関連づけて論じるべきではというコメントも寄せられた。社会経済構造との関連についてはこれまで詳細に取り上げておらず、青年団と伝統的社会風習のみから近視眼的に地域社会の変容を論じてしまう危険性を認識でき、今後の研究を深化させるうえでの重要な示唆が得られた。

 

発表前後の懇親会や休憩時間中にも、本発表に対しての貴重なコメントやアドバイスをたくさんいただいた。青年団員による暴力の事例と現地の若者の苦悩を論じる必要性や、英国のキリスト教徒青年組織や日本の消防団との比較をしてはどうかというコメントからは、対象地域の市民社会をより広い視野で捉えるための手がかりを見出すことができた。さらに、青年団の変容を歴史記述するための史料の扱い方や、多岐にわたる公文書館情報についても非常に詳細にご教授いただいた。多岐にわたる分野の専門家の方々から、自身の研究に対して一度にこれほど多くのコメントを得る機会は今回が初めてであり、大変有用で貴重な機会をいただけたことに感謝しております。改めて関係者の皆様にお礼申し上げます。

 

 

»「現代インド・南アジアセミナー」2013

パーマリンクをブックマーク

コメントは受け付けていません。