【現代インド・南アジアセミナー 受講生研究発表】発表者:渡部智之

現代インド・南アジアセミナー

氏名:渡部智之(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
発表タイトル:「インドの就学前保育事業における中間集団の役割とその可能性:デリーの総合的乳幼児発達支援事業を事例に」

現代インドでは、急速な経済成長の恩恵が将来の国家を支える乳幼児の健康や教育の保障にまで至らず、乳幼児のライフチャンスが制限されている現状がある。インド政府は、下層民の乳幼児及び母親を対象に、健康や教育サービスを提供する総合的乳幼児発達支援事業の実施を通じて現状改善を試みてはいるが、事業実施面の問題点が多く指摘されてきた。こうした諸問題に対して教育学や開発学などの立場から、政府と市民社会の連携や政府に対するアドボカシーの有益性の指摘がなされたが、連携やアドボカシーに関わる住民が、他のアクターと協働しながら子育てにおける課題の解決に向かう具体的な過程が十分に明らかにされてこなかった。

 

そこで今回の発表では、フィールド調査に基づき連携とアドボカシーの事例を検討することにより、下層民に属する親と多様なアクターとの子育てにおける課題解決に向けた協働可能性を報告し、事業改革における中間集団が果たす役割について考察を行った。報告では、事業目的を制限して効率的な事業運営を行うNGOおよび行政と下層民のギャップを埋めるNGOの活動を比較しながら子育てにおける課題解決に向けた協働可能性を明らかにし、最後に事業への下層民の実践的な参加を推進するためのひとつの可能性を中間集団に見出した。

 

本発表に対してフロアからは、当事業の歴史的変遷や中間集団の定義についての質問や、今後の研究の方向性についての指摘がなされた。具体的には、今後の研究調査対象として、事業に関与する行政職員のみならず、警察などと住民の関係性にも視野を広げる必要性を指摘がなされた。またジェンダーの視点を取り入れた分析は現段階で不十分であり、今後の調査研究に向けて非常に有益な指摘であった。

 

 

»「現代インド・南アジアセミナー」2013

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