第6回コラム
国立民族学博物館拠点「研究資源の収集・構築・公開」
三尾稔(国立民族学博物館・グローバル現象研究部・教授)
田中鉄矢・菅野美佐子(人間文化研究機構・地域研究推進センター研究員/国立民族学博物館・南アジア研究拠点・特任助教)
国立民族学博物館拠点(MINDAS)では、「南アジアにおける社会的レジリエンス」と「環流する南アジア」という二つのユニットを設置し、グローバル化やボーダーレス化が進展する南アジア社会において、人やモノや文化が変化との対峙や受容を繰り返しながら新たな価値を創造する状況をより深く追求するための研究活動に取り組んでいます。「南アジアにおける社会的レジリエンス」ユニットでは、カーストや同郷ネットワークなど、かつてより紡がれてきた社会的資源を活用しながら、目まぐるしく変化する社会で生じうるリスクに柔軟に応答する状況を、社会・文化人類学的観点から調査研究を進めています。他方、「環流する南アジア」ユニットでは、都市から農村、あるいは国外への移動の活発化により南アジア発のモノ・情報・価値が異文化と相互作用しながら作り出され、元の社会や文化にも影響する状況を「環流現象」としたうえで、南アジアの「文明性」をあらためて問い直す取り組みをしています。研究成果は学術書や研究論文などの印刷物として出版されるだけでなく、オンラインでの情報発信やデータベースの公開を行っています。当拠点メンバーである研究者の南アジアに関する論文やコラム等は、『国立民族学博物館研究報告』や『民博通信』、Senri Ethnological Studiesなどに掲載され、オンラインで公開されています(「国立民族学博物館ホームページ・民博リポジトリ」よりアクセス可能https://minpaku.repo.nii.ac.jp/)。また、民族学博物館の特性を生かし、映像を含めた資料の収集と展示を通しての研究の発信にもつとめています。
国立民族学博物館拠点(MINDAS)では、「南アジアにおける社会的レジリエンス」と「環流する南アジア」という二つのユニットを設置し、グローバル化やボーダーレス化が進展する南アジア社会において、人やモノや文化が変化との対峙や受容を繰り返しながら新たな価値を創造する状況をより深く追求するための研究活動に取り組んでいます。「南アジアにおける社会的レジリエンス」ユニットでは、カーストや同郷ネットワークなど、かつてより紡がれてきた社会的資源を活用しながら、目まぐるしく変化する社会で生じうるリスクに柔軟に応答する状況を、社会・文化人類学的観点から調査研究を進めています。他方、「環流する南アジア」ユニットでは、都市から農村、あるいは国外への移動の活発化により南アジア発のモノ・情報・価値が異文化と相互作用しながら作り出され、元の社会や文化にも影響する状況を「環流現象」としたうえで、南アジアの「文明性」をあらためて問い直す取り組みをしています。研究成果は学術書や研究論文などの印刷物として出版されるだけでなく、オンラインでの情報発信やデータベースの公開を行っています。当拠点メンバーである研究者の南アジアに関する論文やコラム等は、『国立民族学博物館研究報告』や『民博通信』、Senri Ethnological Studiesなどに掲載され、オンラインで公開されています(「国立民族学博物館ホームページ・民博リポジトリ」よりアクセス可能 https://minpaku.repo.nii.ac.jp/)。また、民族学博物館の特性を生かし、映像を含めた資料の収集と展示を通しての研究の発信にもつとめています。
国立民族学博物館(みんぱく)は、文化人類学・民族学とその関連分野の大学共同利用機関としての役割を担っており、本博物館に所属する研究者たちは、世界各地の社会や文化の動態についての民族学的調査研究に取り組んでいます。また、みんぱくがこれまでに収集してきた標本資料は約34万5千点を超え、世界最大級とも言われており、その中には南アジア地域に関する資料や映像が多数含まれています。現在、みんぱく所蔵の標本資料や映像音響資料を、国内外の研究者、利用者、そしてもともと資料を制作し、使用してきた現地の人々とインターネットを介して共有し、データベースを共同で作り上げていく「フォーラム型情報ミュージアム」事業の推進も行っています。この取り組みが広がれば、国内外での新たな共同研究や共同展示、コミュニティ活動へとつなげていくことも可能となり、南アジア地域研究の発展にも貢献できると期待しているところです。ここでは、みんぱくが公開する資料のデータベースのなかから南アジアに関わる情報について紹介していきます。
(1)標本資料
博物館内の南アジア展示ゾーンには、インドをはじめ、ネパールやブータンなど南アジア地域で収集された生業、生活、儀礼などにまつわる様々な道具やオブジェ等が展示されています。展示されている以外にもおよそ2万点の資料が収蔵されており、これら資料のほぼ全件についての基本情報がデータベースに収録されています。また、衣装やアクセサリーに特化し、インド(1637点)、ネパール・ブータン(773点)、パキスタン(102点)、スリランカ(40点)の衣文化に関する資料を収録したデータベースも公開されています。標本資料データベースには下記のリンクから検索画面にアクセスし、各地域の資料についてサーチすることが可能となっています。
●「国立民族学博物館 標本資料記事索引データベース」
http://htq.minpaku.ac.jp/databases/mo/mobib.html
●「衣服・アクセサリーデータベース」
http://htq.minpaku.ac.jp/databases/mcd/clothing.html
館内の展示ゾーンのほかに、映像資料を鑑賞できるビデオテークが設置されており、南アジア地域でみんぱく所属の研究者によって撮影された暮らしや祭礼、芸能に関する映像作品56点を鑑賞することができます。また、映像資料のなかには貸し出し可能な作品もあり、下記のリンクから確認することができます。
「国立民族学博物館 ビデオテーク」
http://htq.minpaku.ac.jp/databases/videotheque/Top.html
(2)写真データベース
①「沖守弘写真データベース」
みんぱくでは、写真家・沖守弘(おき もりひろ)氏が1977年から1996年にかけて、インドおよびネパールで撮影したおよそ2万点の写真を本人の依頼により受け入れ、人間文化研究機構の「現代インド研究」プロジェクトの経費も投じながら分析、整理、デジタル化を進めてきました。沖守弘氏は1929年に京都で生まれ、1950年代から70年代にかけて日本社会の報道写真家として活躍しました。1970年代にインドに渡った沖氏は、その後20年の間に幾度となく渡印し、マザー・テレサの活動を写真に収めるかたわら、インドやネパールの各地を訪れ、祭礼や芸能、工芸にまつわる写真を撮影し続けました。その写真の一部は、みんぱくが刊行する『季刊 民族学』の誌面を何度も飾ったほか、写真展や写真集としても発表されています。このデータベースであつかっている写真の中には、撮影情報(撮影年月日や対象人物など)が不完全なものもありますが、インドやネパールにおいて現在立ち入りの難しい地域や、すでに見られなくなった芸能や工芸などが多数含まれています。データベースへはMINDASのホームページにリンクを掲載しています。下記のリンクからアクセスのうえ、ぜひ貴重な写真資料をご覧下さい。
●「沖守弘インド写真」
http://htq.minpaku.ac.jp/databases/moindia/japanese/
②「ネパール写真データベース」
このデータベースでは、1958年に川喜田二郎隊長のもとに結成された「西北ネパール学術探検隊」に参加した高山龍三氏(京都文教大学元教授)と隊員が撮影した写真、3584点が収録されています。また、同隊がネパール探検・調査のなかで収集し、現在、国立民族学博物館に収蔵されている標本資料(295点)の写真も含まれています。本データベースが収録する写真には、1959年のチベット動乱以前のドルパ地方の様子が記録されており、世界的にもきわめて貴重な資料となっています。
●「ネパール写真データベース」
http://htq.minpaku.ac.jp/databases/nepal/
上記のデータベースに加えて、沖氏によるインド・ネパールでの写真撮影の際に書き残した取材メモ、書簡、参考とした資料類や、「西北ネパール学術探検隊」の隊員が記録したデータカード(6584点)や関連資料の目録も「民族学研究アーカイブズ」として公開されています。なお、原資料も一部を除いて館内での閲覧が可能となっています。ご関心のある方は民族学資料共同利用窓口にお問い合わせください。
●「民俗学研究アーカイブズ」
http://nmearch.minpaku.ac.jp/
このほか、みんぱくの図書室には、南アジアの社会や文化、歴史などに関わる膨大な文献資料が所蔵されており、館外からも多くの研究者や学生が資料を求めて訪れます。グローバル化により他国の社会や文化がますます近くに感じる今日、当拠点が取り組む研究と、当館が所蔵する豊富な文字資料および視覚資料が、南アジアの研究の発展に寄与するとともに、広く一般の人々の南アジア理解にも大きく貢献することを願います。
(文責:菅野美佐子)