氏名:山岸 伸夫(京都大学)
発表タイトル:「「養育」としての奉仕―現代インドの聖なる学校給食をめぐる新たな公共性の創出―」
本発表では、クリシュナ意識国際協会が創設した支援組織による学校給食の配給活動を分析し、現代インドの公共領域で宗教と世俗の価値が溶融しながら、食をめぐっていかに新たな社会関係が構築されるのかを考察した。それは、世俗的な福祉制度のなかの関係や神の奉仕を通じた関係だけでなく、宗教的価値の鋳直しによって提示された養育という課題を共有し、それを実際に身体・情動的に共有するような複合的な関係の創発だと報告した。コメンテーターからは、宗教実践を配給という名で戦略的に行っていると考えられないか、発表者が組織に戦略的に出入りしたことで複合的な関係を提示できたにすぎないのではないか、とのコメントをいただいた。また参加者からも、支援活動のビジネス化と言えないかというコメントや、宗教実践を語り直す際にいかなる意図が働いているのかといった質問をいただき、食をめぐる公共性の可能性について議論を深めることができた。