研究グループ1「南アジアの人口・資源・環境」

インドおよび南アジア地域は、アジア・モンスーン地域の西端に位置し、大部分が熱帯でありかつ半乾燥の気候条件にあります。モンスーンがもたらす雨期は一般に短く、降雨も突発的で不安定です。同地域の農業が、乾燥農法を取り入れた畑作体系の特徴を色濃くもち、その近代化が、地下水資源に決定的に依存する形で達成されてきた所以です。人類は、所与の自然生態環境をベースとしつつ、そこに活動の歴史を幾重にも積み重ねることによって生存を維持し、発展させてきました。したがって自然生態環境を基礎とする農業など第一次産業だけに注目することは、歴史を大きく見誤ることにつながります。特に、インド・南アジア地域は、南に大きなインド洋が開け、かつ古くから東西交易の拠点として栄えてきました。住民の生存基盤は、農業など第一次産業のみならず、家内工業や交易など、非農業活動へも大きく依存しつつ維持・発展してきたのです。

以上を踏まえ、本研究グループは、大きく以下の3つの研究課題を立てます。

第1は、インド・南アジア地域における自然生態環境と住民の経済活動の発展との関係性について、主に農業など第一次産業、および住民の資源利用のあり方に焦点を当てつつ、歴史的視点から現代に至る長期変容過程を分析・考察します。その際、同じアジア・モンスーン地域に属しつつもかなり異なる自然生態環境にあった東アジアや東南アジアなど、他地域との比較を念頭に置きます。

第2に、インド・南アジア地域における、長距離交易を含むより広い経済活動の発展について、農業など第一次産業を基盤とする在地社会との関連において歴史的に分析・考察していきます。それは、1990年代以降、インド・南アジア地域が歴史的にその本来の姿である「開放性」の大きな経済により回帰しつつ発展している中、その動向を誤ることなく見通すために必要不可欠な作業であり、かつ経済全体が、自然生態環境により強い基盤をもつ農業など第一次産業の活動とのバランスをいかに取っていくのかを見極めるためにも不可欠です。

第3に、インド・南アジア地域の現代の資源環境問題に関する調査研究です。たとえば、地下水資源に過度に依存する農業のあり方とその持続可能性に関する研究、山間部の森林など自然保護と住民との関係性に関する研究、農業低生産性にあえぐインド東部の農業・農村発展に関する実践的研究などがここに含まれます。また、農村の資源利用を含むエネルギー問題、農地の宅地転用、荒蕪地の管理、農村・都市間の用水需要の競合などの問題群も排除するものではありません。

代表者:藤田幸一
(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 教授(協力教員))

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