イベントを読み込み中

« イベント一覧

  • このイベントは終了しました。

【KINDAS】KINDAS研究グループ1-A「南アジアの長期発展経路」第2回研究会

2015年11月27日 @ 4:00 PM - 6:30 PM

日時:2015年11月27日(金)16時~18時半
場所:京都大学本部構内 総合研究2号館4階 AA401(第一講義室)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/yoshida/map6r_y/
 
発表者:小茄子川歩 (東海大学)
タイトル:インダス文明の社会構造と「南アジア型発展経路」—開放性、多様性、階層性、多中心性―

  要旨:インダス文明は、紀元前2600年頃に現在のパキスタンおよび北西インドを中心とする地域に成立した南アジア最古の文明社会である。当文明はその社会構造が解体する紀元前1900年頃までのおよそ700年間にわたり、社会的・文化的な変容を経ながら、モヘンジョダロやハラッパーなどの都市とされる主要な大規模遺跡を中心として、南北1,500km、東西1,800kmにおよぶ広大な範囲に展開した。その範囲はメソポタミア文明やエジプト文明と比較しても遜色ない。この広大な範囲に、当文明に関わる2,600箇所もの遺跡が確認されており、その9割が小規模な村落遺跡である。この事実は当文明社会における小規模村落の比重の高さを示しており、インダス文明社会の特徴の1つともなっている。
言うまでもなく、この広大な地理的範囲を特徴づけた環境は多様であり、当地に住む人々に生業や居住などの側面で様々なレベル・形態での適応を要求した。その結果として、中心である都市、周縁の都市的集落および大・中・小規模村落に、生業や技術、経済、文化レベルの異なる社会集団が共時的に存在する、多様な構造の社会が生みだされた。
インダス文明社会における中心=都市では、周縁に既存のものとして存在する多様な地域的文化要素の取捨選択と再編がおこなわれ、新たな「伝統」が創出される。この「伝統」の特筆すべき点は、既存の歴史的・知的伝統を基盤として成り立っていることである。多様性を活かした総合のあり方こそがインダス文明社会における中心=都市を特徴づけているのであり、中心=都市は新たな「伝統」を周縁に波及させるかたちでその地域における文化的規範としても機能する。
そしてインダス文明の社会構造を規定する基本的な力学とは、商品交換を新たな「伝統」をともなうかたちで波及させることにより空間的統一性と時系列的一貫性を創造し維持しようとする中心=都市=市場側の動機と、地域的多様性と状況に依存した可変性を志向する伝統地域諸社会側の動機との「せめぎあい」であると理解できる。インダス文明の場合は、とくに商品交換に特徴づけられる上層集落(中心=都市=市場)同士の水平的な連鎖の統御が重視される傾向にあり、村落などの基底に位置する集落空間の自律性の統御には力点が置かれていないことに特徴がある。自律的な個別性(多様性)と他律的な統一性、この一見すると矛盾する2つのベクトルの絶妙な均衡構造にもとづく二重社会こそがインダス文明と呼称される社会システムの基本構造である。
以上のような社会構造をもつインダス文明は、絶対的な王あるいは1つの中心を生みだすことなく、「国家」に至らずに衰退・解体する。その理由は、村落などの基底に位置する集落空間を特徴づける多様性の統御には力点を置かず、商品交換に特徴づけられる中心=都市=市場同士の水平的な連鎖の統御を最重要戦略とする社会システムにおいては、各地に存在する同位都市間のネットワークを維持することが最優先事項であり、社会は自ずと多中心性を帯びることになるため(=同位都市間共生のメカニズム)、絶対的な王あるいは1つの中心にもとづく略奪と再分配という「国家」を特徴づける交換様式はとくに必要とされなかったからであると推察される。
さて、少なくとも紀元前一千年紀半ば以降までは、南アジアにおいては「国家」は存在しなかった。いいかえると、「国家には到らない発展径路」が長らく南アジアを特徴づけていたと考えることができる。この「国家には到らない発展径路」を特徴づけるのが、「開放性に基づく多様性の接触と展開、そしてそれらの多様性の階層的かつ多中心的な統合」(田辺明生 2015 「カースト社会から多様性社会へ」田辺明生・杉原薫・脇村孝平編『現代インド1 多様性社会の挑戦』 11頁 東京大学出版会)である 。
当発表では、田辺明生・杉原薫・脇村孝平編『現代インド1 多様性社会の挑戦』所収の3本の論考(田辺明生 2015 「カースト社会から多様性社会へ」 3-28頁;脇村孝平 2015 「人口と長期的発展径路—自然環境と「開墾・定住」過程」 61-84頁;田辺明生 2015 「グローバル・インドのゆくえ—多中心的なネットワークの展開」 333-354頁)で議論された「南アジア型発展経路」および「インド亜大陸を特徴づける長期的発展経路」について、インダス文明社会までさかのぼり、南アジア考古学の立場から検討あるいは相対化すること試みる。

【問い合わせ】INDAS事務局 indas_office@asafas.kyoto-u.ac.jp  

詳細

日付:
2015年11月27日
時間:
4:00 PM - 6:30 PM
イベントカテゴリー:
,

会場

京都大学本部構内 総合研究2号館 第一講義室(AA401)