INDAS-South Asia概要:詳細

拠点形成の目的

組織図

人間文化研究機構「南アジア地域研究推進事業」(2016年度~2021年度)は、2010年度に発足した「現代インド地域研究推進事業」(~2015年度)の成果を継承・発展させ、南アジア地域の文化、社会、政治、経済、自然、環境等の現状を、学際的かつ長期的な視点から理解し、関連する重要問題を解明することを目標とする研究事業です。

本事業の前身である「現代インド地域研究推進事業」の第一期計画(2010年度~2014年度)では、京都大学を中心拠点、国立民族学博物館を副中心拠点とし、東京大学、広島大学、東京外国語大学、龍谷大学に置かれる計6つの拠点によるネットワーク型共同研究体制を整備してきました。そして、研究者ネットワークの構築を通じて研究者間の交流と学際的対話を推進すること、インドの現在的動態について全体的な把握を促進すること、また総合的地域研究としてのインド研究に対する次世代研究者らの興味を喚起すること、誰でもアクセスできるような研究インフラを整備することなどを目標として活動し、大きな成果をあげました。それは、現代インドが政治・経済・社会・文化などあらゆる面で発展・台頭し、国際社会における存在感を増してきたことと軌を一にするものでした。

インドは引き続き高度経済成長を遂げており、国際政治においても影響力を一層増しています。きらびやかな都市文化の発展と消費活動の拡大は一段と進み、若者を中心とする農村から都市への移動、さらには中東や北米などへの海外移民・出稼ぎも加速し、経済の躍動と国際化のさらなる進展、それに伴う社会や文化の変容も急激です。しかしその反面、インドの社会経済問題の深刻化も進んでいます。経済発展の恩恵から取り残された人々が存在し、貧富の格差は拡大しています。宗教・カースト紛争も絶えません。女性の地位向上は、解決すべき急務の課題です。地下水資源に依存した食料・農業生産の持続可能性が懸念されており、都市混雑や環境汚染も深刻さを増しています。

更に、インドの周囲には、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータン、モルディブなど、政治・経済・社会・文化などすべての側面にわたって歴史的に相互に深い関係を保ってきた国々があります。これらの諸国は歴史を通じて、そして現在もなお強い一体性を保持しており、南アジアとして地域区分されるものです。インド以外の南アジア諸国も、近年は急激な経済発展と社会・文化変容を経験しつつ、それぞれに深刻な社会経済問題を抱えています。

南アジアは、人口や経済規模などでインドが圧倒的に大きな存在となっており、また宗教の違いなどもあって、南アジア内の国際関係は、協調とともに緊張関係もはらんでいます。南アジアを構成する各国それぞれの社会経済問題、南アジア域内の国際関係、さらには南アジアと世界との国際関係をめぐるさまざまな動きは、グローバル化がますます進み、それに対する適切な対応が一層重要となっているわが国にも大きな影響を与えるものです。

以上を踏まえ、現代インド地域研究の第2期計画(2015年度)では、インド・南アジア地域の現実(政治、経済、社会、文化、自然、環境等)を総合的に把握し、その変化の行方を見定めることを基本目的としながら、そのような客観分析に基づきつつ、一歩踏み込んで問題の解決を志向する研究を推進してきました。

そして2016年4月からは、この第二期事業を廃止した上で、「南アジア地域研究」と名称を改め、6年間の新たな事業として再出発することになりました。「南アジア地域研究」は、これまで「現代インド地域研究」の名の下に、実質的に、インド以外の南アジア諸国、すなわちパキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパール、ブータン、モルディブをも包含する形で、地域的一体性の強い南アジア地域全体を研究対象としてきた事実をさらに強化しつつ、引き継ぐものであり、これで名実ともに、南アジア地域全体を対象とする地域研究プログラムとなります。

「南アジア地域研究」では、「現代インド地域研究」第二期事業を引き継ぎ、以下のような重点事業を推進していきます。第1に、これまでの事業展開によって国内のネットワーク型共同研究体制が一定程度整備されたことを踏まえ、国際的な連携強化により一層力を入れ、海外に積極的に発信し、双方向のコミュニケーションをより活発にすることをめざします。そのため、海外に散らばる南アジア研究センターとのコンソーシアム構築をめざした活動を推進していきます。また、国立民族学博物館を、主に海外との連携強化を担当する副中心拠点とし、中心拠点をサポートする体制を維持・強化していきます。

第2に、南アジア地域の総合的理解を引き続き推進しますが、一歩進んで、地域研究者ならではの総合的・俯瞰的で深い理解をベースにしつつ、現実の問題解決を志向する研究を行います。南アジアは、急速な経済発展を基盤に社会文化も大きく変容しつつありますが、それに伴ってさまざまな社会・経済・政治問題が深刻化し、新たな問題も噴出しています。域内および域外との国際関係の緊張も予断を許しません。それは、グローバル化がますます進展する中、適切な対応がこれまでよりもさらに重要となっているわが国にとっても、到底無視しえるものではありません。そうした現実の問題解決を志向するため、「南アジア地域研究」では、「現代インド地域研究」の第二期事業を引き継ぎ、全体テーマを「グローバル化する南アジアの構造変動―持続的・包摂的・平和的発展のための総合的地域研究」とし、副題にある3つの理念に関連した研究を推進していきます。

研究対象

重たる焦点は南アジア地域の現在的動態にありますが、それを歴史的深みと将来的な展望をもって理解するため、長期の歴史的展開を視野に置きます。地域的広がりとしては、南アジア諸国に加え、インド洋世界や南アジア地域からの移民の活躍するグローバルな諸地域にも及びます。また対象領域としては、政治、経済、社会、文化、思想、文学、ジェンダー、環境、国際関係などであり、常に学際的な視野を保持しながら、南アジア地域の総合的理解と問題解決に向けた研究を推進します。

研究方法

南アジア地域の動態と将来的展望を理解するため、さらに問題解決を志向するため、以下の3点をめざします。

  1. 南アジア地域の多様性に留意しつつ全体像を描きます。マクロとミクロの総合および量的データと質的データの高度な結合を行います。
  2. 歴史的・文化的な深みにたって、南アジア地域の動態と将来的展望を把握します。歴史と現在をつないだ長期的視野を確立し、人文科学と社会科学そしてフィールド研究とテキスト研究を融合させます。
  3. 文理融合に基づいた南アジア地域の理解を推進します。自然科学と人文社会科学の協力により、自然生態から歴史文化、政治経済までを包括する総合的な南アジア地域研究を確立します。

研究組織

南アジア地域研究は、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属南アジア研究センターを中心拠点、国立民族学博物館を副中心拠点とし、東京大学大学院人文社会系研究科附属次世代人文学開発センター、広島大学、東京外国語大学、龍谷大学人間・科学・宗教総合研究センターに置かれる計6つの拠点を結ぶネットワーク型の研究組織をつくり、人間文化研究機構との共同研究として実施されます。各拠点の研究領域・テーマは以下の通りです。

中心拠点:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属南アジア研究センター(KINDAS)
[総括責任者]:藤田幸一(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授(協力教員))
[拠点代表]:藤倉達郎(南アジア研究センター長、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授)
[中心テーマ]:「南アジアの環境と政治」

副中心拠点:人間文化研究機構国立民族学博物館・南アジア研究拠点(MINDAS)
[総括副代表・拠点代表]:三尾 稔(国立民族学博物館南アジア研究拠点代表、国立民族学博物館准教授)
[中心テーマ]:「南アジアの文化と社会」

東京大学拠点:東京大学大学院人文社会系研究科次世代人文学開発センター・現代インド研究部門(TINDAS)
[拠点代表者]:水島司(現代インド地域研究部門の長、東京大学大学院人文社会系研究科教授)
[中心テーマ]:「南アジアの経済発展と歴史変動」

広島大学拠点:広島大学現代インド研究センター(HINDAS)
[拠点代表者]:友澤和夫(現代インド研究センター長、広島大学大学院文学研究科教授)
[中心テーマ]:「南アジアの空間構造と開発問題」

東京外国語大学拠点:東京外国語大学南アジア研究センター(FINDAS)
[拠点代表者]:粟屋利江(南アジア研究センター長、東京外国語大学総合国際学研究院教授)
[中心テーマ]:「南アジアの文学・社会運動・ジェンダー」

龍谷大学拠点:龍谷大学人間・科学・宗教総合研究センター・南アジア研究センター(RINDAS)
[拠点代表者]:嵩 満也(南アジア研究センター長、龍谷大学国際文化学部教授)
[中心テーマ]:「南アジアの思想と価値の基層的変化」

研究成果の公開

南アジア地域研究プロジェクトの6年間の研究活動の成果として、以下のとりまとめをめざします。またこれら以外にも、最後の2年間(2020年、2021年度)については、事業の成果を国内外の大学・研究機関、一般社会等で活用に資するような活動を推進していきます。

  1. 英文叢書の編集・刊行
    国際シンポジウムの成果を、英文叢書(New Horizons in South Asian Studies, Routledge)や国立民族学博物館から出版されている英文論文集シリーズの一環として刊行します。
  2. ワーキングペーパーの編集・刊行
    次世代研究者の研究成果や萌芽的な研究アイディアなどを適宜ワーキングペーパーとして刊行します。
  3. 和文・英文のウェブサイト上での研究成果の蓄積
    和文・英文のウェブサイトを活用して、各拠点での研究活動や研究成果などの情報を蓄積し、国内外に発信します。
  4. 南アジア地域の研究資料の整備と公開
    資料整備委員会の主導の下、南アジア地域にかかわる研究史資料の充実、またポータルサイトおよびデータベースの整備と公開を図ります。

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